養豚場ではたらく車

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こんにちは。BUTAchanのブログへようこそ。

今回は、幼いころに一度は見たであろう本「はたらくくるま」みたいなイメージで『養豚場ではたらく車』がテーマです。養豚場では日々車を使って作業をします。疲れすぎて「ちょっとそこまで」重機に乗っていく人も中にはいたりして。。。

 

フォークリフト

フォークリフトは、重機の中で最もポピュラーな車ではないでしょうか?物流センターや市場などで見かけたことがあると思います。養豚場でも、様々なモノを運ぶのに大変重宝しています。

紙袋に入っている餌や飼料添加物(1袋20㎏が多い)の搬入や、豚を移動する際によく使います。豚を移動する時は、金属製のカゴ(カゴと呼んでいるけれど一般的には檻?)に豚を数頭入れて運びます。(冒頭画像㊤

最近はオートマのフォークリフトもあるのですが、ひと昔前の養豚場にはマニュアル車しかなかったため、慣れるのに苦労しました。免許取り立ての人間にマニュアルフォークリフトは難易度高かったです。。

 

ホイールローダー

これはよく建築現場などでみかけると思います。

養豚場では、モノを運ぶのにも使いますが(死亡豚とか。。)、糞の処理に使うことが多いです。糞をすくってコンポストに投入したり、オガコ豚舎の場合は豚房の掃除をしたり、オガコを入れたりします。軽トラで買いにくるお客さんに堆肥を積むのもホイールローダーを使います。

ところで、オガコ豚舎で豚房をキレイに掃除するためには、すべての敷材をとらなければなりません。ローダーですくうのですが、取り切れない部分はスコップでとる手作業になります(重労働!)。そのため、養豚場で働く人はローダーの使い手となります!以前、建築現場で働いていた人が入社した時に「みんな運転うまいね~」と驚いていました。

 

〘油圧シャベル〙

これも建築現場シリーズでおなじみの「シャベルカー」です。

意外と養豚場にもあります。こちらは、キャタピラー式なので、足場が悪いところも入っていけます。

世の中のイメージするオガコ豚舎は、フカフカのオガコの上で豚が走り回っている感じだと思います。最初はそうですが、これは収容頭数と期間で徐々に糞尿がオガコに吸収・備蓄されていきます。水のトラブルなので、オガコに浸水してしまうと田んぼのようになってしまい、そうなるともちろん掃除をします。オガコ豚舎も色々方式があって、オガコを浅めに敷いたり、深めに敷いたりします。深めに敷いた豚舎で浸水した場合、田んぼなのでタイヤで走るホイールローダーだとはまってしまうため、油圧シャベルの出番となります。

油圧シャベルの運転は、操作するところがたくさんあって難しかったです。

 

〘ダンプカー〙

糞や堆肥を運んだり、豚を運ぶのにも使います。2トンダンプが使い勝手が良いと、個人的には思います。

 

〘軽トラック〙

農家のポルシェ?、軽トラック。1台あると便利です。軽トラダンプだと堆肥やオガコも運べてなお良し、です。

 

バキュームカー

あると便利なバキュームカー。下水が汲み取り式の時はお世話になるあの車です。

養豚場では、飲み水のこぼれ水・豚舎を水洗した時の水・尿などが汚水(下水)として処理されますが、たまに下水管がつまることもあります。バキュームカーがあると、業者に頼むよりも早く問題解決!水のトラブルは仕事が増える。。

 

〘家畜運搬車〙

これは、持っている農場と、外部委託する農場があると思います。

養豚場の多い地域や、家畜処理場の近くの道路を走っているとみかけることもあると思います。生体が乗っている状態ですれ違うと香りが漂ってきますね。香り以外のもの(マジメに病原菌もあり得る)も飛んでくる可能性があるので、マイカーの時には近寄りません。

牛・豚・鶏はまぁまぁみかけます。馬の特別待遇な車(競走馬運搬中って書いてある車)もたまにみかけます。

満員電車並にぎゅうぎゅうに積んでいると思われるかもしれません。が、吊革も何もない電車にスカスカで乗っていることを想像してみてください。ある程度ぎゅうぎゅうの方があっちこっちに行かないので体を傷めないのです。

 

〘バルク車(飼料運搬車)〙

こちらも持っている農場と、委託している農場があります。

飼料を積んできて、飼料タンクに入れる車です。

牧場などでもみかける飼料タンクですが、1トンから20トンタンクまであります。

バルク車からタンクに餌を入れる時やタンク内を掃除する時は、タンク脇についているはしごから餌タンク頂上(投入口がある)に登るのですが、けっこう高いです。晴れていると気持ちが良いですね~。頂上付近に蜂とか毛虫とかいると、避けるにも避けづらいのでそれだけは勘弁です。

 

大体こんな感じでしょうか?

ちなみに、バルク車はほとんど大型トラックなので、自分は運転したことはありません。家畜運搬車も大型が多いですが、昔4トンロングがあった頃は少しだけ動かしたことはあります。大きい車はこわいです。(運転に自信なし)

養豚場に就職する時に、大型免許や各種免許があると仕事の幅が広がりますね~。

では、また機会があればよろしくお願いします。

               (続)

豚飼いの名言集③ 『一豚入魂』

f:id:BUTAchan:20210912185241j:plainこんにちは。BUTAchanのブログへようこそ。
今回は、養豚家の名言パート③です。

③ 『 一豚入魂 』

今回も、読んで字の如く です。野球界で「一球入魂」と言われるのと同じで、豚1頭1頭に魂込めて育てましょう!ということです。
『一豚入魂』は、会社によっては事務所に掲げられていたり、公に発信する時に言われたりするので、聞いたことのある方もいるかもしれません。

ところで、養豚場の豚たちは、競争社会で生きています。人間以上だと思います。この競争社会を弾かれずに生き抜いてきた豚たちがお肉になります。我々従業員は、弾かれそうな豚を救って拾ってうまくお肉になるように、1頭1頭気を配っていますが、今日はそんな競争社会の一部を書いてみます。


〘生まれる前から競争〙

豚の子宮は人間と違い、ひとつの入口(出口でもある)から左右2ヶ所の子宮に分かれています。そのトンネル状の子宮に、胎児たちは枝豆のように1頭いて、また1頭。。。と入っています。母豚のコンディションにもよりますが、子宮内の胎児同士の距離が近いと、栄養と場所の取り合いで、十分に発育できずに小さく生まれてきたりします。植物と同じイメージですね。植物ならば間引きを行いますが、何しろ子宮内なので。。。我々にできることは、母体に十分な栄養を適切な時期に与えてあげること、つまり餌量と体型管理です。


〘良いおっぱいをめぐって競争〙

無事に生まれてきたら、次は「乳争い」が始まります。出の良い乳房は取り合いで、これに勝利するとすくすく育つことが多いです。一応、豚は乳争いで決まった場所の乳房で哺乳するといわれています。なので、出が悪い場所しか残っていないと、発育不良になったりもします。すべての乳房の出が良いのが理想ですが、なかなか難しいです。上(顔側)から2番目の乳房が一番出が良い、といわれています。
いくらおっぱい(乳頭)がいっぱいあっても、乳の出が良い母豚と、そうでもない母豚がいます。これは母豚としての能力ということになりますが、仮に分娩時に10頭生まれたとして、そのまま10頭バラつきなく育て上げる母豚と、成長不良の仔豚が数頭出てしまう母豚がいます。
母豚は生涯に何回も分娩を重ねるので、このあたりの数字は母豚の「成績」として記録しておきます。何頭産んだか(総産仔)、その内生きているのは何頭か(生存産仔)、離乳することができた頭数(離乳頭数)、あと生時体重や離乳体重・哺乳期間なども「母豚カード」(カルテのようなもの)に記録して、その母豚の近くにおき、すぐに情報が見られるようにしてあります。これは、分娩舎では「里子」をする時に参考にします。たくさん産むけれど育てない母もいれば、仔数は少ないけれど乳が良くて育てる母、産むし育てる母、産まないし育てない母(→これはリストラされますが。。)色々います。
話が逸れましたが、あとは良い乳が出るには母豚が元気でないといけません。分娩後の肥立ちが悪い、というのもしばしばあるので(特に夏はひどいです)、母豚が元気に餌を食べる状態をキープするのが分娩舎の仕事の一つだと思っています。最近は、良い代用乳も販売されていますが、豚の世界では「母乳しか勝たん」と思います。1日中仔豚に代用乳を与えていて良いというなら話は別ですが、仕事が他にもたくさんあるので厳しいです(涙)。もちろん、成長不良の仔豚を救うためには代用乳は良い仕事してもらっています。


〘集団社会での競争〙

そうして、順調に育ち、離乳を迎えると集団生活の始まりです。哺乳中は10頭くらいの兄弟で生活していたのが、(農場によって様々ですが)30~100頭くらいの群になります。豚1頭ずつに餌箱があるわけではなく、2~5頭くらい一緒に食べられる餌箱で順番に食べるため、強い豚がずっと食べていると弱い豚は負けてしまい食べられない、ということも割とあります。なので、できるだけ群のパワーバランスを均等にするべく、「群分け」という作業も大事です。養豚場の豚は、月齢・サイズによって何回か引っ越しをするため、移動するたびに大小分けをしてやるとキレイに育ったりもします。例えば、離乳舎では50頭、仔豚舎では25頭、肉豚舎では12か13頭のように、基本的にはどんどん群の頭数は減らしていくのがベストです。
途中で、食い負けてきて細くなってくる豚もいます。農場によっては、そういう「落ちこぼれ」たちを集める豚房もあります。手遅れになる前に落ちこぼれ部屋に抜いてやり、飼いなおしてやることで、立派な肉豚に戻ることも多いです。
ただ、1つの群が少数ならば良い、というわけではありません。豚房の広さによって適正頭数は異なりますが、多すぎても少なすぎてもよく育ちません。少ないと、餌をあまり食べなくなってしまいます。ある程度の競争は必要で、「みんなが餌を食べているから私もたべなきゃ!」なのかな?逆に頭数が多くて自分の食べる番が全然こないと、そのうち豚はあきらめてしまいます。豚は悪い意味で「あきらめがよい動物」なのです。


いかがでしたか?豚も人間も競争社会で暮らしているのですね。
「一豚入魂」は生前から出荷するまでの落ちこぼれを救うことなのか。。。と、書いていたら変に納得しました。
それでは、また機会があればよろしくお願いします。

                                 (続)


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学校でのお勉強②

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こんにちは。BUTAchanのブログへようこそ。

今回も、前回に引き続き「学校でのお勉強②」を書こうと思います。

思いっきり自分の記憶だけで書いているので非常に曖昧な所も多々ありますが、もし深く知りたければ専門書なども売られているのでそちらからどうぞ。。。あくまで、「畜産系学校卒が養豚場に勤務したらこんなことを思った」くらいなニュアンスで読んでいただけたら幸いです。講義より実習の方が記憶に残っていましたね(だって実習の方が楽しかったんだもん)。

では、大学の講義の続きです。

 

 

【食品化学】

肉部門と乳部門に分けて、それぞれ加工品になるまでの過程などを学びました。

格付けのこと、と畜してから食肉になるまでの肉の変化の過程、ソーセージというくくりの中にウィンナーやフランクフルトがある、チーズ・ヨーグルトの歴史やら加工工程とか。

現場では、例えば筋肉注射をする時は「耳根部」に打ちますが、フリー(豚が豚房の中で動いている状態)で打つと狙いが外れることがあります。が、外れて肩の方にいくと「肩ロース」の部分に注射をうつことになり、場合によっては肉に損傷が残ることがあるため「耳根部」に打ちましょう、ということですかね。

肉の部位や、熟成過程なども知っておいた方が良いですし、何より、格付けに関しては養豚の生産部分ではゴールなので重要です。食肉加工も行っている場合はここの学問がメインですね。

 

【動物遺伝・育種学】

こちらも申し訳ないですが、記憶の彼方です。が、簡単に言うと「メンデルの法則」とかもっと難しい話とかですかね?

畜産は、育種の過程と言っても良いと思います。美味しい肉のかけ合わせ・たくさん産む母豚の体型・良い雄の体型などなど。

スーパーで買う豚肉は「三元豚」が多いと思いますが、この「三元豚」はブランド名ではありません。代表的なものは、母豚(大ヨークシャー×ランドレース)×雄豚(デュロック)の子供です。3つの品種がかけ合わさったものが「三元豚」です。大ヨークシャー、ランドレース、デュロックはそれぞれ豚の品種名で、それぞれの「強み」を混ぜた三元豚が最終的なお肉となります。

養豚場には、肉豚生産農場と、これらの種豚(母豚・雄豚)を生産する農場があり、種豚生産農場では、遺伝子レベルで交配の研究をしている、とも聞きます。私はこちらの部分に深く携わったことがないため、知識が薄いです。

 

【家畜繁殖学】

大体字を見ればわかりますが、繁殖に関わる講義です。例えば、豚の発情周期は21日で、卵巣の状態変化や体内のホルモン分泌がこう変化します、のような感じです。

現場では、もちろん日々種付けを業務として行っているので、発情を確認したりするのに必要な分野です。教科書通りに発情がくる豚もいれば、生き物なので例外もあります。例外に対応するために、知識は必要ですね。

 

【動物福祉論】

いわゆる「アニマルウェルフェア」です。動物園でこういう取り組みをしている、とか。

養豚場では、豚たちは広いところでのびのび暮らしているわけではないので、できるだけストレスをなくすように日々頭をひねっています。

 

【家畜行動・管理学】

家畜化の歴史(いつ頃から豚は飼っているの?とか)、家畜舎の仕組みとかを習いました。行動管理実習では、羊の行動をひたすらメモする、というシュールなものがありました(例:13:30~13:35 摂食 13:35-13:37 歩く 13:37-13:45 休息 等)楽しかったですよ。こういうのが苦にならない性格なのです。

現場でも、豚の行動を見て、その豚がどうなのかを判断することがたくさんあります。群が固まって寝ていたら寒い、とか皆が騒いでいたら何かトラブっているだとか。

 

【家畜栄養学】

人間の栄養学と大体同じなのかな?タンパク質だとか、ビタミンだとか。

栄養学実習で牛の糞の解析をする、ということで牛糞を煮る?詳細は忘れましたが、なかなかインパクトのある実習でした。これで何を調べたかというと、こういう飼料を食わせたらこれだけ消化されました、ということです。糞の成分から未消化の成分を調べたのですね。

養豚の中で、飼料は非常に大事なものです。数ある飼料メーカーの中から選び、さらにたくさん販売されているサプリメントなどを選んで、その農場でベストな飼料を作ります。候補豚・種豚・授乳期・前、中、後期ミルク・仔豚・肉豚用。豚のステージ(大きさ)によって飼料も違います。

 

【野生動物学】

好きな分野なのに、何を習ったか覚えていないという。。。不覚すぎる!!

絶滅危惧種だとか、外来危険生物だとかのことだったような。。。(涙)

動物園見学もこの授業だったかな?動物園・水族館大好きだったなぁ。

山の中にある養豚場では、野生動物もたくさんいます。もちろん、病気の関係で場内に入れてはいけませんが、何がいるかを知らないと防御もできませんよね。

足跡・糞・堀った跡など痕跡からイノシシなのか、タヌキなのか、アライグマなのかがわかります。

 

 

こんな感じでしょうか?

ところで、畜産系の学校を出て、畜産の職に就くと、しばしば頭でっかちの部分が目立つ場合があります。新人の立場からすると、「あ!これ知ってる。習った!」的な感じで発言してしまったりするのですが、先輩社員からすると「学校と現場は違うよ。。」と思うこともあります。特に畜産系の学校卒ではない先輩社員的にはちょっと「うーーん」となるかもしれません。

まぁ、大目に見てあげてください!数年たったら新人くんもわかります。非畜産系出身の方は、こんな勉強していたんだね~と思ってやってください。ただ何年たっても言動に進化のない新人くんには。。。厳しめに行きましょう(笑)

冒頭の画像は、AI(人工受精)のカテーテルです。前回、カテーテル型ボールペンの画像を載せたので、今回はホンモノです。

では、また。機会があれば読んでください!

              (続)

 

学校でのお勉強①

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こんにちは。BUTAchanのブログへようこそ。

畜産系の大学を卒業してもう20年くらい経ちました。。。(えっっっ!?)

今回は、大学で習った講義は実際の現場でも役立つよ~、ということで「学校でのお勉強①」がテーマです。

あの頃はよくわからないし、退屈だったあの講義その講義も、今聞いたらスーッと耳に入ってくるんだろうなぁ。むしろ、今もう一度聞きたいです。

あくまでも自分の主観ですし、記憶もうろ覚えです。もし、万が一学生さんがこのブログを読んでくださったら少しだけモチベーションが上がるかも!?。

ただ、現場で働く人たちは、畜産系を学んだ人ばかりではありませんし、むしろそういう人たちの方が日々真摯に知識を入れている気もします。何が言いたいかって、ただ今の自分には少なからず大学の勉強が役に立っているよ~と言いたいだけです。

 

【動物生理学】

動物の体のしくみを習ったはず。筋肉・神経の名前(どれだけ多いんだろう!?)や、動物によって内臓のしくみも違うので(誰もが知っているけれど牛は胃袋が4コあるとか)、そのようなことを学びました。

知っておきたい(知っておくべき?)基礎知識ですね。人間にも当てはまりますしね。

 

微生物学】 ※①

ウィルス・細菌・寄生虫などについて学びました。〇〇属やら好気性嫌気性とか、どんな病気を引き起こすかとかですね。テストは長い横文字だらけで覚えるのが大変だったと記憶しています。「コロナウィルス」もここで習ったはずです。

現場で関連することは、豚の病気についてです。が、まだ序盤です。

 

【家畜伝染病学】 ※②

動物の疾病について学びました。例えばCSF(豚熱:当時は豚コレラ)はCSFウィルスが引き起こし、強い伝染力・高い致死率があり、死亡や元気消失、食欲不振などの症状があり、法定伝染病である、のような感じです。頭に「豚」とか「牛」とかついているのは覚えやすいですよ。偶蹄類だけの疾病だとか、もういっぱいあり過ぎるし。テストは選択問題で「法定伝染病ではないのはどれか?」とかなかなか暗記力が試されました。

現場では、もちろん豚の病気に関してで、一つ前の『微生物学』からつながります。

 

【動物薬理学】 ※③

薬剤についてですね。抗生物質であるペニシリン系の薬剤が何に効果があるとか、消毒で用いるエタノールが何に効果がある、等どの薬剤が(微生物的に)何系に効果があるのかないのかを学びました。

現場では、例えば検査で病気が発見されて(※②)、その病気はこの微生物によって引き起こされて(※①)、これに有効な治療薬はそれで、予防のための消毒剤はあれだ(※③) のような感じです。

実際には、管理獣医師がいたりするので、大きな病気の場合は獣医さん判断になります。日々の管理で「この咳はあの病気だからその薬を注射しましょう」みたいなことは割と日常です。

 

【動物解剖学】

解剖学実習では、ヤギの解剖をしました。

現場では、獣医ではないですが我々従業員が死亡豚の解剖をすることがあります。「健康な状態」を知らないと「異常な状態」がわかりません。解剖してもわからない時もたくさんありますが、肺・心臓・肝臓・大腸あたりはよく観察します。そして、記録のために写真を撮るため画像フォルダーには臓器の写真もちらほら。。(笑)

死亡豚の状態から死亡原因を推測して、例えば「この病気は肺がこんな感じになる」というのを知った上で解剖して照らし合わせることをたまに行います。

 

【動物衛生学】

これは、いわゆる「シモの処理」の講義でした。糞を堆肥化する方法や、汚水を浄化する方法などを学びました。

現場でこの分野はとても重要です。生き物を飼っている以上必ず出てきます。この教科書は、現場に入ってだいぶ経ってから読み返しました。人間の下水処理も基本は同じですね。

 

【動物統計学

これは当時は本当によくわかりませんでした。。簡単にいうと、例えばある実験を行って、それを検証する時に用いる様々な計算方法を学ぶ、ということですかね。「関数電卓」なるものを購入しました。卒業論文を書く時にもう一度教科書を読み返しましたね。

現場では、直接使うことはありませんが、例えばCSFワクチンを接種して、その後採血して抗体検査を行い、何%が抗体価が上がっているのでOKです、のようなやりとりを家畜保健所と行います。

 

【動物資源経済学】

ごめんなさい。正直あまり記憶はないけれど講義名は覚えている。。。

字面からすると、動物資源(肉とか加工品・皮とか)の輸出入に関することや、国内生産の講義だったかな?

輸入豚肉は、日本の養豚業界にも関わることだし、日本の家畜たちの餌となるトウモロコシなどはほぼ輸入に頼っているので、ここの分野も知っておくべき知識です。

 

 

長くなりそうなので、2回に分けることにしました。

どんどん情報は更新されていくけれど、年齢とともに一度頭に入ったことはなかなか抜けづらくなっていきますね。頭の中も更新しなければ!!と思う今日この頃です。

ちなみに、冒頭の画像のペンは、豚のAI(人工授精)カテーテル型ボールペンです。昔頂いたものですが、こういうレアグッズ好きです。

また機会があればよろしくお願いします。

                (続)

豚にワクチン

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こんにちは。BUTAchanのブログへようこそ。

令和になり、人間はコロナで、豚は豚熱(CSF)やアフリカ豚熱(ASF)でウィルスの脅威に脅かされています。コロナの流行り出した頃は「ワクチンが完成したら!」のような希望がありましたが。。アフリカ豚熱(ASF)はワクチンすらないし。。。

というわけで、今回のテーマは「豚にワクチン」です。

 

人間や、ペットのように、家畜である豚も様々なワクチン接種をします。

目的は「病気の予防」と「発症リスクの軽減」で、農場によって「農場にあったワクチンプログラム」で接種を行っています。これは、農場ごとに「存在するウィルス・細菌」が異なるためです。人間で考えると、農場1つが「国」のような感じですかね?今わかりやすく例えるならば、コロナウィルスの武漢株や、デルタ株のように、といえばイメージがわくかと思います。

養豚場に入場する際、車体の消毒をしたり、人間はシャワーを浴びて、その農場で決められた服と履物に着替える、といった様々なルールは、この「農場ごとの違うウィルス(違う株も含めて)」の持ち込み・持ち出しを防ぐためです。直近で他の養豚場に出入りしたか、海外渡航歴があるかどうか、もルールとして申告します。

養豚場に入場する際のルールや、農場内での衛生ルールもたくさんあります。(入場する前にシャワーを浴びる・車の消毒など)

さらに、近年は豚熱(CSF)対策として、農場全体を柵で囲んで野生動物の侵入を防ぎ、防鳥ネットをかけて野鳥が入らないようにしています。以前はタヌキをたまに場内でみかけました。しかも疥癬を患っているタヌキ。柵をしてからは、侵入を防ぐことができて、こちらもたまに出ていた豚の疥癬もピタっと出なくなったので、効果を実感しています。

 

対策は色々とっていますが、それだけで病気は防げません(コロナもそうですよね)。実際問題、養豚場は豚が「密」にいます。養豚業界で言う「密飼い」とはまた違いますが(密飼い:1豚房にたくさんの豚を飼っていること。ストレス、病気を引き起こしやすくなります)、経済動物のため、そんなにゆとりのある飼い方はできません。人間も同じで、仕事や学校があるため完全に密を防ぐのは難しいですよね。

なので、少しでも病気の発生を防ぐためにもワクチン接種は不可欠なのです。

ワクチンは、種類によって「感染したが発症を防ぐ」「症状軽減」などがあり、その中のひとつに「感染を防ぐ」ものがあるのです。ワクチンを接種したら無敵になるわけではないのです。

 

 人間では、赤ちゃん~幼少期に色々なワクチン接種を行います。定期接種(法律で決められている)と任意接種があり、複数回接種が必要なものもあり、混合ワクチンもありますが、すごい数です。(詳しく知りたい方は、ググってください。)

豚用のワクチンもたくさんありますが、あくまでその農場に必要なワクチンを選択して接種します(ワクチンは高値!!)。そして、現在国で決められた獣医師のみに接種が許可されている豚熱(CSF)ワクチン以外は、従業員が接種します。

 

・いつ頃から? → そのワクチンによって、接種に最適な時期が異なります。早ければ生後1週齢から打ちます。今の農場では、①生後3週齢(2種類) ②生後35日齢 ③生後40日齢(CSF)④生後45日齢 ⑤生後56日齢 肉豚は出荷までに5回ワクチンをうちます。親豚は、妊娠するたびに3本(混合ワクチンもあるため病気的には5種類)のワクチンをうち、さらに1年に1度CSFワクチンをうちます。

・どうやって? → 注射器で(人間でも使うプラスチック製のシリンジやゴツい金属製の注射器、連続注射器などがあります)

・どこに? → 筋肉注射の場合は耳根部に(耳後ろの部分。ここにうまく打たないと商品(肉)に影響が出てしまう場合があります)⇒冒頭の画像参照

ワクチン接種以外にも、病気やケガの豚に治療を行うことがありますが、これも基本的には耳根部に注射します。

・逃げない? → 逃げます。抱っこできるサイズであれば抱きかかえて接種するのが確実です。抱っこできないサイズの場合は、板を使ったり狭い場所に満員電車のような状態にして順番に接種します。

・針はどんなもの? → 多種多様に販売されているため、豚のサイズに合った針の太さと長さのものをチョイスします。哺乳豚では長さが1.5~2㎝の細くて短い針を使います。生後40日くらいの豚では、長さは2㎝ですが、哺乳豚で使用するものよりも太い針を使います。親豚では長さが4㎝!たま~に間違って自分に刺すと痛いです。。。

 

思えば、この業界に入りたての頃。20ml注射器と4㎝の針を先輩に渡されて、「母豚に打って」と言われました。誰でも最初は初心者!ですが、母豚は大きいし、なんか威嚇してくるし、注射器も大きいし・・・!とだいぶビビった思い出があります。 ⇒冒頭の写真では、完全に注射に慣れて豚に注射しています。

慣れです。針が折れたり曲がったりすることもあるので、常に注射する時は「全集中!」です。(もう古い?)豚とタイミングを合わせれば、そんなに騒ぐこともありません。

 

コロナのワクチン接種も始まり、副反応が話題となっていますが、豚にもワクチン後の副反応はあります。何より、群の仔豚に接種して、「この後安静にしてください」は不可能です。数時間ピーピー鳴いていたり(痛いのでしょう)、半日~1日餌食いが落ちたり(倦怠感?)、接種した次の瞬間に仮死状態になる場合もあります。仮死状態は長くて数分ですが、こちらもビックリします。

 

今回は豚のワクチン接種(のやり方)について書いてみました。また機会があれば読んでください!

 

                (続)

養豚場まわりの四季の変化

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こんにちは。BUTAchanのブログへようこそ。

養豚場は、人里離れた山の中にあることが多いです。民家の中に養豚場があるということもありますが、ニオイ問題が必ずセットです。民家の中の方が野生動物の侵入の恐れががなくてその点は安心ですけれどね。多くの養豚場が山の中にありますが、そうすると四季の訪れを肌で感じます。そんな四季を感じさせてくれる植物や虫・動物を今回のテーマにしようと思います。

 

〘春〙

寒さが少し和らいでくると、ウグイスが鳴き始めます。「ホーホケキョ♪」と静かな森の中で響くウグイスのさえずりは風流ですね。桜が咲き、菜の花が咲き、茶色かった山も徐々に緑に変わっていきます。地面にはタンポポ。良いですね~。

野ウサギを見かけることもあります。私はまだ見ていないので、来年こそは!と思っています。

アオダイショウやシマヘビなどのヘビも冬眠から目覚め、日向で見かけるようになります。

 

〘初夏〙

桜が散って間もなくすると、ホトトギスが鳴き始めます。以前はカッコウもいたのですが、最近はみかけないですね。ツバメもやってきてスーパーの駐車場などに巣を作ります。カラスも絶賛子育て中でやたら数がいるし、集団でいてコワい。。。キジバトも増えてきます。ツツジやフジも綺麗に花を咲かせます。

また、初夏には毛虫が大発生します。上を見たら木の葉にビッシリ。。。落ちてこなければよいけれど。。最初はミニサイズの毛虫の大群で、少し経つと大きいサイズであちこち歩いています。糸にぶら下がって空中にいるのは、正直やめてほしいです。

 

〘梅雨〙

ジメジメな梅雨時は、ナメクジ・カタツムリの各サイズが見られます。ムカデも増えます。ムカデの何がイヤって、噛むのと毒があるところですかね?無害なら放っておく・・こともないか。赤(オレンジ)×黒×黄って色合いが強すぎます。

世間はアジサイが咲いていますが、植えていないと農場では見られません。カエルが出てくるのもこの頃かな?「ゲロゲロゲロゲロ」大合唱というより、ヒキガエルの独唱です。1匹でも大きな声。きらいじゃないけれど、お昼寝中にはちょっとウルサイ。

タケノコ(真竹)もこの頃。イノシシもタケノコ狙いでやってきます。

 

〘真夏〙

梅雨明けしてめちゃくちゃ暑い時に元気なのは、セミたちです。色々な種類のセミたちが大合唱。豚舎にゴキブリも増えます。豚舎のドアを開ける時に少し距離をとって開けないと、上から降ってきて自分の体にくっ付きます。。余談ですが、仕事中に見るゴキブリは大丈夫なのです。まぁ、作業着に付いても無言で振り払うし、長靴に潜んでいて履くときに踏んづけても「ふぅ」ってなるだけです。自宅でゴキブリに遭遇するとけっこうイヤですけれどね。

暑くなると、ハエも一気に増えます。35℃以上?猛暑だと動きが鈍いのですが、30℃くらいだと日々ものすごい勢いで増えていきます。こまめに殺虫剤(畜産現場で使う強力なやつ)をまくぞー!よく効きます。

花は、ヤマユリが咲きます。良い香りで、凛としている感じがして良きです。

夏は、草(雑草)の成長スピードが半端ないです。刈っても刈っても生えてきます。

松の木の下に車を置いておくと松ヤニが落ちてくるのも夏かな?

 

〘秋〙

あちこちにイガグリが落ちていきます。栗もイノシシの大好物。ちなみに豚も好きです。イガグリからだした殻付きの栗をバリバリ食べます。

秋は、ススキ的な草が育って。。あ、ハチの季節ですね。去年、事務所の屋根裏にスズメバチが巣を作っていました。なので、いつも屋根裏を走り回っているネズミがいなくなったのですが、ハチを駆除したらネズミは戻ってきてしまいました。

夏はみかけないジョロウグモが増えるのは秋。夏から秋にかけてはクモも活発で歩いていると顔にクモの巣がかかります。

 

〘冬〙

冬にはツグミヤマガラがいます。冬鳥もいいですね。

ミノムシはみかけますが、冬は農場内の虫たちも静かな気がします。

ツバキが綺麗に咲きますね。山は茶色く静かに休んでいます。

アオダイショウも冬眠でお休みです。

 

【一年中】

スズメやハクセキレイハシブトガラスコジュケイ、トビなどは一年中みかけます。

外来動物のアライグマもいました。これがまた悪さをするのです。ミルクの餌(20kg紙袋)を破って食べていました。。タヌキやシカもいたなぁ。

昔はたくさん鳥の鳴き声を覚えたけれど、すっかり忘れてしまいました。残念。

それでもフクロウとハヤブサを見た時はテンション上がりましたね!

 

ここまで読んでくださってありがとうございます。

ちょこちょこメモを取っておけばよかったなぁ。今の季節のこと以外忘れています。思い出したことだけをツラツラ書きました。

それでは、また機会があればお願いします。


※昨年からは農場の周りを柵で囲み、鳥避けネットもしています。(CSF対策)


               (続)         

豚の鳴き声

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こんにちは。BUTAchanのブログへようこそ。

豚の鳴き声は、皆さんご存じ「ブーブー」。もちろんブーブー鳴きます。でもこれだけではないのです。犬や猫を飼われている方はわかると思います。「わんわん」「にゃー」だけではなく、色々なバリエーションがありますよね?豚もそうなのです。

というわけで、今回のテーマは『豚の鳴き声』です。

 

〖飯よこせコール〗

養豚場では、「種豚」と言われる親豚たちは「制限給餌」といって1日に何回か決まった量の餌を与えられます。対して、離乳した仔豚~出荷するまでは「不断給餌」といって餌は食べ放題スタイルのところが多いと思います。

親豚たちは、1日1~4回餌の時間があります(妊娠中か哺乳中によって異なります。農場によっても違います)。この餌の時間の母豚たちの鳴き声はものすごいです。「ブォー!!」と雄たけびのように叫び、近くで会話もできないくらいの声量です。全員が全力で「飯よこせ~~!!」と言ってきます。

誰か1頭(の母豚)が豚舎に来る『餌をくれる人間』に気付き、鳴き始めるとたちまちそれが伝染して、みんなが鳴き始めます。これを「スイッチが入った」と内々で呼んでいます。女性の集団のパワーがすごいのは、人間だけではありません。。。

そう、雌豚が飯よこせの雄たけびをあげる中、雄ぶたはあまり鳴きません。もちろん、立ち上がって「ちょうだい!」と態度で現してはいますが、大声をあげているのはあまり聞いたことがありません。なんでだろう~?

ところで、なぜ「制限給餌」なのか?それは、太りすぎてしまうからです。分娩・授乳するのにちょうど良い体型になるように管理しています。太りすぎも痩せすぎもNG。豚のためにも従業員のためにもならないのです。

 

〖発情すると吠える〗

離乳してから5日目、あるいは21日周期でやってくる豚の発情期。豚によって個体差がありますが、発情すると「ブフォ ブフォ」と吠えることがあります。

豚の発情は、外陰部が赤く腫れる・餌を食べなくなるなどから判断します。発情期間は1~5日くらいですが、「許容」OKな時から種付けを開始します。許容の豚の背中に乗ると、豚は耳をピーンと立て、動かなくなります。

そんな感じで種付けした豚ですが、うまく着床しなかったりで種が付いていない時があります。その豚をうまく見つけていかないと、「タダ飯食い」が生まれてしまうのですが、種付けしたはずの母豚が吠えていたら、再発(再発情のこと)注意で、その豚を確認しにいきます。

 

〖授乳中の優しい声〗

種が付き、分娩が終わり、授乳期間に入ります。豚は大体1時間に1回くらい授乳しているのですが、この時に「ブッブッブッブッ」と鳴きます。これは、10頭近くいる仔豚を呼び集めるのですが、仔豚たちが集まってお乳を飲んでいる時間も鳴いています。

これがものすごく優しい声で癒されます♡

あの餌よこせコールしている豚と同じとは思えませんが、授乳中に母豚の餌くれ時間がくると、授乳を中止して餌くれコールを始めます。うん。食べないと乳出ないしね。

 

〖仔豚の危機〗

ここから、仔豚たちの鳴き声です。

生まれたばかりの仔豚は1.5㎏ほど。対して母豚は小さくても150㎏くらい、大きいと250㎏くらいはあり、親子の体格差はすごくあります。

しかも、仔豚は10頭近くいて(場合によっては15頭以上)、母豚が一度立つとわらわらと仔豚は歩き出します。母豚が寝ようとしても腹の下にわらわら。1頭いなくなっても違う仔豚が腹の下へとことこ、なんてことも良くあります。母豚も気をつけて寝ようとしますが、どうしても巻き込み事故に合う仔豚が出てきます。足で踏まれたり、腹の下敷きになったり。この時、仔豚は「ピギャー!!」と甲高い声で助けを求めるので、我々従業員が助けにいきます。母豚は、というと反応して立つ豚もいますが、無反応も割と多いです。。。

兄弟げんかや柵にはさまって鳴いたりもします。基本的には踏まれた時と同じような鳴き方ですが、声の危機感が違います。

 

〖離乳直後の仔豚〗

離乳した仔豚は、母豚を探して「ブヒ↗ブヒ↗」と鳴くことがあります。まぁ、急に母豚がいなくなるのだから、当然ですが。

この前感動したのは、離乳豚舎から脱走した1匹の仔豚が、離乳豚舎から一番離れた妊娠豚舎(母豚がいる)ところまで行き、なおかつ自分の母親の元にいたことです。離乳した翌日だったため、仔豚は乳を飲んでいました。他の母豚には小突かれていましたが、たくさんいる母豚の中から自分の母親を探し当てる!すごいです。

 

〖イジメ〗

ちょっと重い話になりますが、豚の世界にも「イジメ」はあります。気付いてその群から離してやらないと死に至ります。この時は「ピーピー」が近いかな?集団リンチをくらうため、早期に発見しないと鳴く力もなくなってしまいます。

豚のイジメは、その豚が何らかの病気を持っていて何か違うニオイを放っているため排除のために起こる、という説もあります。ある種の防衛本能ではあるけれど、人間目線で見るとやり方がエグいです。。

 

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

また機会があればお願いします。

               (続)