豚飼いの名言集② 『夏を制する者は養豚を制す』

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こんにちは。BUTAchanのブログへようこそ。

梅雨明けしました。いよいよ夏本番です。今回もまた豚飼いの名言集です。

 

名言② 「夏を制する者は養豚を制す」

 

名言①「目を鍛える」よりもわかりやすいと思います。読んで字のごとくです。

では、ここで養豚の基礎知識を書こうと思います。

・母豚(ぼとん)の妊娠期間は約114日(3月3週3日)

・母豚は、30日ほど授乳して、離乳すると5日後に発情がくる

・生まれた子豚がお肉として出荷されるまで約半年

・豚は大きさ(体重)によって快適な温度が違う

  ⇒ 新生仔豚:35℃ ~ 母豚:18℃ 

 

ポイントはこんなところでしょうか?

要するに、真夏の7~9月に種付けされた母豚は11~1月に分娩し、その子豚は順調に育てば翌年5~7月に出荷されるのです。

 

母豚の快適な温度は18℃。真夏は不快度MAXです。豚は汗腺が発達しておらず、汗をかけないため暑さが苦手です。暑さが体に堪えてくると口を開けて犬のようにはぁはぁ呼吸をして、餌を食べなくなってしまいます。母豚の平熱は38~39℃で、暑くてバテている母豚は42℃くらいまで上昇していることもります。

 

暑い中、大仕事である分娩・授乳を終えて離乳すると、その5日後に次の発情がきて種付けを行います。ただし、これも母豚がベストコンディションならば、の話です。夏は離乳後の発情(発情回帰)が悪くなりがちです。7日後にきたり、豚によっては1ヶ月こなかったり。理由は、暑さで分娩後の子宮の回復が遅れていたり、疲労だったりなのですが、発情回帰が読めないと、種付けの計画の見通しが立たず、種が付かないとそれは11~1月分娩腹が少なくなる。そして、それは翌年5~7月の出荷頭数が減ってしまう。このあたりが、「夏を制する者は養豚を制す」の真意です。

暑いのは母豚だけではなく、雄豚も同じで、暑さ対策を行わないと夏バテで性欲もダウン。精液の質も悪くなり、母豚に着床しても仔数が少なくなったりします。

 

時には、豚も命を落とすことさえある暑さ。なので、少しでも良い環境になるように色々頑張るのですが。。。暑さが堪えるのは人間も同じで、本当に朦朧としながら作業しています。(ほぼ毎日熱中症に近い)

 

汗をかけない豚をどうやって涼しくするのか?これは、気化熱を使います。最近はあちこち街中でミストシャワーを見掛けますが、まさにアレです。体を濡らして風を当てるのです。大きな扇風機とミストシャワーのコンボ。扇風機だけだと、ただ熱風が当たるだけですが、水があると体感温度がだいぶ下がります。

 

ここで、最初のポイントを思い出してほしいのですが、新生仔豚の快適温度は35℃。母豚は18℃。いくら暑くても母豚に合わせると仔豚が寒がってしまいます。ミストシャワーを、分娩舎でやると、(使い方にもよりますが)仔豚が濡れてしまい、さらに風が当たると兄弟みんながダンゴのように固まってブルブルしてしまいます。なので、分娩舎にいる母豚には、1頭1頭に水がポタポタ垂れるような装置を付けたり、水を入れ凍らしたペットボトルのキャップを外して、飲み口を下にして母豚の上から吊るして、自然に解凍された冷たい水がポタポタ垂れるようにしてやります。

仔豚の調子が良くないと乳を十分に吸えず、母豚の調子も悪くなります。その逆もしかり。

 

豚は、暑くなるとどうなるのか?答えは、餌を食わなくなる、です。

夏に元気なのは離乳直後の豚くらい、というくらい餌の食う量が減ります。大体25℃を超えると悪くなってくるかな?

母豚や雄豚は、餌を食わせるために1頭1頭こまめに対応しますが、肉豚が餌を食う量が減るのも大問題です。だって、餌を食わなければ大きくならないじゃないですか!出荷体重に到達するのがどんどん遅くなっていくのです。もちろん、ミスト+風は当てています。常に新鮮な餌と冷たい水が飲めるようにも心がけます。それでもさすがに38℃なんてあったら食欲なくなりますよね。

でも豚はどんどん生まれるため、豚小屋の場所をどんどん空けていかないといけない。仕方がないので少し小さいけれど出荷してしまう。夏の出荷は、だんだん無言になっていきますね。。。

夜の温度が25℃を下回り始めると、その間に豚が餌を食べるようになるのでまだ安心します。熱帯夜で日中も暑い期間をどう乗り切るか!?毎年「夏場対策」を考えて夏に挑みます。いつから日本はこんなに暑くなったのでしょうか?

 

ここまで読んでくださってありがとうございます。

夏本番。ご自愛ください。それでは、また機会があればお読みください。

              (続)