哺乳豚への処置②

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こんにちは。BUTAchanのブログへようこそ。

今回は、前回の続きで生まれた後の仔豚に行っていることについて書こうと思います。

前回は「初乳」「鉄剤注射」「去勢」「断尾」についてでした。それでは、どうぞ~。

 

【 耳刻(じこく)】

耳を切って印をつけます。V字に切れる耳刻器を使って、私は腹ごとに「仔豚番号」を切っています。

分娩があると、「分娩台帳」に順番に記帳していきます。それら分娩の順番に番号を振ります。10月の最初に生まれた腹は「1001」、2番目に生まれた腹は「1002」・・・。これが「仔豚番号」になります。なので、一緒に生まれた兄弟は皆同じ耳の切り方をしています。

これで何がわかるかというと、「父」「母」「生年月日」がわかります。

そうです。トレーサビリティです。出荷する時にはもちろん、母豚選抜の時、死亡した時、変な豚がいる時など、耳刻があるとなしとでは情報量が違います。

牛でよく見る耳についているピアスのような「耳標(TAG)」も個体識別するツールです。種豚ではもちろん使いますが、基本的に肉豚にはあまりつけません。コストの問題と、意外とアレは途中で外れてしまうのです。

 

【 抜歯 】

これは、行う農場と行わない農場があります。自分もかつては抜歯をやっていたことがありますが、今はやっていません。

生まれたばかりの仔豚には、すでに犬歯が生えています。上下左右に2本ずつ、計8本。仔豚同士の乳争い時に仔豚がケガをしたり、哺乳時に母豚を傷つける可能性がある、ということで昔は抜歯をするのは当たり前でした。

ニッパー(もしくは人間用のニッパー型の爪切り)を使い切る方法と、やすりで犬歯の尖りをこする方法があります。いや、やすりって。。時間かかりますね。。。

切る場合も、切りすぎると出血して、その後仔豚が痛みで乳を飲めなくなる可能性があるため、上部の尖りを少しか、半分くらいを切ろうとしていました。

腹(兄弟)の中で極端に小さい仔豚がいることがあります。こういう仔に対して抜歯をしないと(そして他の兄弟は抜歯をする)、けっこう乳争いに勝てたりもしました。

母豚への傷は、抜歯をしてもしなくてもあまり変わらないようにも思えました。そして、何よりも「抜歯」の作業がないだけでかなりの時短になるため、個人的には抜歯はやらなくても良いかな~と思います。

 

【 下痢予防薬を飲ませる 】

哺乳仔豚と下痢は切っても切れない関係で、違う農場の分娩舎担当が集まると必ずと言ってもいいほど下痢の話題は出ました。生後3日齢と7日齢でする下痢はその後の回復に時間もかかり、命を落としてしまうこともあります。

下痢も原因菌は、PEDなどの有名な?原因ウィルスによるものだけではなく、他のウィルスや病原性大腸菌や原虫によるものもあります。そもそもの原因も、豚舎の汚染状況や、母豚の体調(ほぼコレだと思う)があります。

その中で、割と簡単にできる優秀な経口予防薬が販売されているので、哺乳豚に経口投与をしている農場が多いと思います。高価だけれど効果あります。

 

【 各種ワクチン 】

以前書いた『豚にワクチン』のところでも少し触れましたが、農場によって接種する時期も種類も違うワクチン。多くは哺乳中にワクチンプログラムはスタートします。

早ければ生後1週間で開始です。人間だと考えられないですね。。。

ワクチンも、接種前には人肌(≒豚肌)くらいに温めてから行います。接種対象腹の体調(下痢がひどいなど)も考慮して接種します。

作業的には、分娩舎で行うワクチン接種は小脇にかかえて行います。なので、幼い頃に行う方が作業的には楽だし確実に接種できます。離乳以降は満員電車状態にして打つことが多いです。今の農場では、最後のワクチンは70日齢くらいで打つのですが順調に育っている豚は30㎏ほどあります。力が強いのです。。。(豚を抑えるのも大変)なかなかの作業量ですね。

以前いた農場では週270頭離乳していて、7・8・9週齢でそれぞれワクチン接種を行っていました。なので、1週間のワクチンノルマは270×3=810頭!!人員が確保できない時は一人で作業していました。夏季は地獄でしたね~、正直あの数を一人ではもうやりたくないです。

 

いかがでしたか?養豚場ではこんなことやっているんです、という話でした。

現在私は、①仔豚確保 ②耳刻 ③鉄剤注射 ④ペニシリン注射 ⑤経口投与 ⑥(♂は)去勢 ⑦断尾 の順番で作業していて、1腹10頭いて15分ほどで終了します。連続4腹くらいまでなら集中力が持ちます。昔1日10腹作業した時はその日1日中ずーっと上記作業をしていました。。。

ここまで読んでくださりありがとうございます。また機会があれば読んでください!

              (続)