哺乳豚への処置①

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こんにちは。BUTAchanのブログへようこそ。

今回は、知られているようで知らないかもしれない、哺乳中の仔豚へ行う処置について書いていこうと思います。

 

【 初乳はマスト 】

仔豚は、色々な病気に打ち勝つ「抗体」を初乳から受け取ります。出生後24時間ほど経つと吸収できなくなるため、生後間すぐにどれだけ初乳を飲ませられるかが勝負です。吸収できなくなるのは、腸管(内臓)がそのように作用しなくなるからです。

そのため、生まれたばかりの仔豚たち全員が初乳を飲めるように「分割授乳」を行います。やり方は単純にその時点で乳をよく飲めている仔豚を一時的に隔離して、飲めていない仔豚に乳を飲ませてやります。(冒頭画像)

近年、初乳の代用乳もだいぶ高品質になってきて、18頭とか生まれても割と助けられるようにはなってきました。まぁ、18頭生まれた場合は乳不足もあるけれど、小さい仔豚たちがわらわら歩いている中で母豚が横になる時の巻き込み事故もよくあります。。

 

【 鉄剤注射  】

生まれたばかりの仔豚が乳を飲むことで血が薄まり起こる「生理的貧血」というのがあります。そして豚は、成長が早いです。何しろ1.5㎏ほどで生まれた仔豚が3週間後には6㎏くらいになり、半年後には100㎏を超えるのですから。その成長のために「鉄欠乏性貧血」を起こすこともあります。

この貧血予防のために、生まれた仔豚には鉄剤注射をします。生後3~7日以内に行うのが一般的です。経口タイプもありますね~、使ったことはないけれど。

 

【 去勢 】

去勢が一番有名?ですかね。私は鉄剤注射と同じタイミングで去勢を行っています。

メスでピッピッと切って睾丸を出して捩って取ります。時間にしたら1頭10秒で終わります(慣れるまではもっと時間かかりますが)。さすがに、去勢中(10秒)は鳴きますが、そして術後は一瞬歩き方変になりますが、すぐに歩いていますね。抗生剤注射と患部消毒はマストです。

EUでは去勢時に鎮痛剤・麻酔薬を併用して行うことや、2018年に去勢廃止、というブリュッセル宣言というものを2010年に採択しています。

日本でも廃止を求める声も聞きますが、実際に去勢廃止は無理だと個人的には思います。なぜなら去勢しなかった豚は、肉豚出荷前あたりから雄臭がすごく、出荷しても、「雄」ということで値引き対象です。何故値引きか?肉に雄臭がついていて、人間が食べる肉として販売できないからです。じゃあ、雄臭が出てくる生成熟前に出荷すれば?と思うかもしれません。それはそれで、体重が規定外で出荷してもお金になりません。消費者と生産者のためには「去勢廃止」はキビシイかもしれません。

ちなみに、生殖器を取らない雌よりも、去勢豚の方が太りやすいです。

そういえば、焼き肉(ホルモン焼き)屋さんにあるメニューで「ホーデン」。食べたことありますか?これが実は豚の睾丸です。食べてみると。。。種豚豚舎のニオイがしました(笑)。別のホルモン焼き屋さんでは「おっぱい」もありました。豚のおっぱいです。こちらを食べた感想は「ふ~ん」でしたけれど、見かけたら一度は食べてみたくなるのが性です!

 

【 断尾 】

文字通り、しっぽ切りです。「テールスパッター」という道具で焼き切っています。

なぜしっぽを切るのか、というと「尾かじり」防止のためです。

充分な餌・水もあり、どんなに住環境に配慮しても一定数ある種のストレスを溜めてしまう豚がいます。そしてストレスで「他人のしっぽをかじる」という行為に出ます。かじられた方は血は出るし、その血のニオイで他の豚もちょっかい出してくるし、で良いことはひとつもありません。最悪、根本までかじり、菌が体内に入り、立てなくなったり死んでしまったりもします。

しっぽが長ければ必ず尾かじりが出るかというと、そうではありません。出る方が少ないと思いますが、出た後の被害が大きいため、全頭切っています。

大体群れで1頭か2頭が「尾かじり犯」で、神経質そうな顔をしている豚が多い気がします(本当)。

 

意外と書きたいことがたくさんあったので、今回は前半。2回に分けることにしました。ここまで読んでくださりありがとうございます!また機会があればよろしくお願いします。

                (続)