豚のお産

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こんにちは。BUTAchanのブログへようこそ。

今回のテーマは「豚のお産」です。「分娩」と書くとカタいので、あえて「お産」という表現にします。

産まれる、って感動します。初めて見た時は、「おぉ~~!」となったし、何年経っても分娩中の豚をずっと見ていても飽きません。

 

114日の妊娠期間を経て、豚のお産は始まります。乳房が張り(分娩開始の数時間前からは搾ると乳が出る)、子宮が下がってきて、外陰部が変化してきたらもう間近。母豚もソワソワしたり、前足で掘るような仕草(巣作り)を見せたりします。そして、破水し、お産が始まります。

分娩中は、基本的に左右どちらかに横臥して産みます。途中で自分で向きを変えたりしながらの分娩時間は約2~3時間。最後に胎盤が出てきたら分娩終了です。たまに、餌を食べながら、立ちながら産んでいる強者もいますが、大体の母豚は分娩中は食事はとりません。

 

生まれたばかりの仔豚は、すぐに動きだして母豚のおっぱいを探しにいきます。すぐに歩けるのですね~。分娩当日はさすがに「ヨチヨチ」な感じで歩いています。

仔豚は、1.5㎏くらいで生まれてきます。片手で軽々持てるくらいですね。

1週間後には3㎏弱になり、2週齢を超えると離乳食(粉ミルク)を食べ始めます。

そろそろ離乳の4週間後には8㎏を超える仔豚も出てきます。片手持ちはちょっと厳しくなってきています。(→良く育った証拠!)

 

 

さて、人間は、現代社会の医学の進歩により母体や新生児の生存率がかなり上昇しています。

豚はどうでしょうか?豚社会は、母豚の体の作り方(母豚候補の選抜、餌の量、初回交配時期など)で、その母豚を生かすも殺すも決まります。

養豚場の母豚は生涯多くて10回くらいのお産をしますが、1~3回目くらいまでは母豚もまだ成長中です。骨盤が狭い形質や、太りすぎていたり、母豚の体が小さいと難産になることがあります。帝王切開は、一部の特殊な豚以外には行われないため、安産になるような体型に仕上げていくのが我々の大事な仕事です。

 

個体差はありますが、「破水してから1時間以内」「1頭出てから20分後(前の仔豚の羊膜が完全に乾いている状態)」に仔豚が晩出されていないと、仔づまりの可能性があります。これを放置すると、仔豚は産道の途中で死んでしまうし、イキみ続ける母豚の体力消耗は相当なものです。母豚も命の危険があります。養豚場で母豚や新生仔豚の生存率を上げるのは、日々の管理と、お産が始まったらあとは従業員である我々のフォローです。仔豚がつまっていたら、手を入れて出してあげたり、人工羊水を産道に入れて滑りやすくしてあげたり、人間の助産師さんを真似てお腹を押すのも有効です。完全に「豚の助産師」ですね。

 

豚は、「多胎動物」で1回のお産で10頭近くの仔豚を産みます。ただ、雄の種や子宮の問題で少ない時もあります。私が経験したのは、最少が1頭(豚なのにひとりっこ)で、最多は23頭の産仔数です。どちらもビックリですが、この両極端が同じ日に分娩してくれれば、そんなに問題ではありません。それは、「里子」ができるからです。ほとんどの母豚は、よその仔豚も受け入れて育ててくれます。ただ世の中そんなにうまくいかなくて、多い時は皆多いし、少ない時は軒並み少ないことが多々あります。。

 

さて、10頭近くの仔豚を産む母豚。おっぱいはいくつ付いているのか知っていますか?一番上のおっぱいは、人間と同じくらいの位置で、そこから股に向かって:::とおっぱいが2列に並んでいます。このおっぱいの数と並び方は、母豚候補を選ぶ時の審査の対象となるため、実際に養豚場でお産している豚はそこそこのおっぱいをみんな持っていますが、7対以上が◎ですかね?全部で14個のおっぱい。人間で想像するとコワいですが(笑)10頭近くの仔豚を育てるため、必要です。

このおっぱいの数は、少ない豚は5対とか左右で5:6 ⇒ 審査落ち

多い豚は9対とか左右で9:10 ⇒ 合格  となります。

他にも審査基準はいろいろありますが、審査項目の1つとして、乳頭数があるのです。

 

母豚のおっぱいは、場所によって出が良い・悪いがあるため、生まれた仔豚たちはまずその場所をめぐって喧嘩します。「乳争い」と呼ばれます。強い仔は良い場所を勝ち取りより大きくなり、弱い仔はイマイチなところで成長もイマイチ、なんてこともあります。なので、乳争いが始まる前に生命線である「初乳」をみんなに飲ませるために、「分割授乳」を行います。これは、例えば10頭新生仔豚がいたら2グループにわけて、片方が哺乳している間もう片方は哺乳できないようにして、みんなが抗体たっぷりの初乳が飲めるようにしてやるのです。もちろん、生まれつき小さな仔豚はずっと飲める状態にしておく、などモロモロの配慮の上です。

まだまだたくさん書きたいことがあるのですが、長くなるので今回はこれで締めます。

 

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

また機会があったらお願いします♪

                 (続)